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第23回歌を歩く 利休と晶子の煌めく風の町、堺を散策した [イベント]

◆大阪平野の南部を東西に流れる大和川を渡ると堺市である。大阪にもう何十年も住みながら、堺という町は縁が薄かった。中世には自由都市として海外からもたくさんの人たちを受け入れ、また茶人千利休による茶の湯の文化も発展させた。近年では歌人与謝野晶子を輩出した町であるといった程度の知識しかなかった。

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写真・宿院駅で全員が集合した


 そんな町であるのに、今回、歩いてみるまでは全く何も知らなかったのである。もちろん仕事では何度も足を運んでいたが、そんな文化や歴史に触れる機会は全くなかった。

 いつまでも暑い初秋の頃であったろうか、一度堺の町を歩いてみようーといった提案をもらって、年末の第23回歌を歩くの訪問地に選んだ。
 この会は歌の舞台となった土地を名所旧跡などを巡りながら歩くのであるから、堺を歌った歌を探さなければいけない。ところがこれが難題であった。Googleで検索しても中々見当たらないのである。

 そこで今回のナビゲーターとして参加してもらうことにした、地元在住で今年歌手デビューしたばかりの中村秀香さん(ホリデージャパン)に尋ねたところ、小田純平さんの「煌めく風〜堺〜」という楽曲がある事が分かった。
 堺の町の素晴らしさを歌ったもので、小田さんの作品では珍しいもののように感じた。

■路面電車で堺へ
 
 参加したのは7人であった。大阪・JR天王寺駅中央改札口で午前9時40分に集合することにした。ところがJRの列車の遅れで、30分ほど遅れての出発となったのである。
 ナビゲーターの中村さんとは、大阪に残る唯一の路面電車・阪堺電車の、堺市内にある駅で今回の歌を歩くのスタート地点となった宿院駅で待ち合わせをした。

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写真・我孫子道駅に停車する阪堺電車

 ガタゴトと堺までの路面を走る、信号待ちもするチンチン電車、阪堺電車に乗った。途中、我孫子道駅で乗り換えて宿院駅まで21駅、約35分ののんびりとした旅であった。
 堺市内に入ると電車は、町を南北に貫く広い道路の中央を走る。堺の町は碁盤の目のように区画整理されている。大坂夏の陣で焦土と化した町並みを徳川家康が整備したのであるが、それも先の太平洋戦争で米軍の爆撃に遭って再び灰燼と帰し、戦後新たに造られたのが今の堺の町である。

 宿院駅で出迎えてくれた中村さんの案内で、まずは堺市内の観光名所や歴史など堺の魅力の全てが分かる「さかい利晶の杜」へと足を向けた。2015年に開館した堺市の施設で、利は千の利休、晶は与謝野晶子から取ったもので、2人の偉業を讃える展示も多く見られる。

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写真・利晶の杜
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写真・戦前の町並みを再現したジオラマ
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写真・向かいは千利休の邸宅跡
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写真・千利休の邸宅跡を説明する中村秀香さん
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写真・与謝野晶子の生家跡

 次に千利休の邸宅跡を見学した。茶の湯に使ったという井戸と門が当時のものとして残されているが、土地は屋敷が建っていたごく一部である。
 そこを出て今度は与謝野晶子の生家跡を目指した。ここは道路沿いに石碑と案内板があるだけで、中村さんの案内がなけれは見逃すところであった。

■歴史の宝庫

 昼が近づいたので昼食を摂ることにした。関西人には馴染みの薄いせいろ蒸しそばで有名な、創業が元禄8年(1695年)という327年もの歴史を持つ老舗のちく満(ちくま)に決めた。
 蒸しそばであるから、食感はふわふわで柔らかい。それだから慣れない関西人の多くからは「まずい」「嫌い」という声も少なくない。この日も別の店へ行こうなど、賛否両論があったのは確かである。

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写真・ちく満のせいろ蒸しそば
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写真・天文元年(1532年)創業の小島屋の元祖芥子餅
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写真・休憩した喫茶店

 1斤を頼んだ。生たまごが1個付いてきた。出汁に割り入れてそばを浸けて食べる。うわさ通りに柔らかい。でも毛嫌いするほど不味くはない。
 そば屋の少ない関西において貴重な店かもしれない。

 そば湯まで飲んでちく満を後にして、次に向かったのは南宋寺(なんしゅうじ)。戦国武将の三好長慶が父・元長の菩提を弔うために弘治3年(1557年)に建立し、今は三好一族の墓がある。千利休の墓もここにある。また徳川家康が後藤又兵衛の刃に倒れ、ここに祀られたという伝説もある。
 境内では紅葉の見頃であった。ちなみに千利休も三好長慶も今年が生誕500年だという。

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写真・南宗寺

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写真・三好長慶像
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写真・境内で
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写真・紅葉が見頃であった

 町を少し歩くだけで歴史をいっぱい感じることが出来る。すでに歌を歩くで訪ねた仁徳天皇陵も同じ堺市である。古代から中世、近世、現代へと堺の町の歴史は連綿と続いている。

■伝統技術を生かした自転車産業

 最後の訪問地はシマノ自転車博物館。ホテル第一堺の跡地に、2022年3月にオープンした。同市堺区大仙町にあったの自転車博物館サイクルセンターを新築移転したものである。
 65歳以上は無料ということであったので免許証を提示して入館した。1・2・4階の展示物の自転車やその部品などを見て回るとともに、ビデオによる自転車の歴史を学んだ。

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写真・シマノ自転車博物館
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写真・館内では自転車の歴史が学べる


 堺は鍛冶屋の伝統を持つ町である。包丁と鉄砲の町としても知られ、シマノはその伝統を生かしてスポーツ自転車部品の世界最大手企業となった。
 創業者の島野庄三郎は堺の鉄工所職人から身を起こしている。そこに始まるシマノの技術の伝統を伝えるのが、この博物館てまある。

 気のせいであろうか、堺の町には自転車屋さんと包丁屋さんの看板がやたらと目に入ってきた。そんな堺の町は、歴史と文化・技術・食など魅力がいっぱいで、歌のタイトル通りに静かにきらめいていた。











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