◆日本語によるきれいな表現がたまらなく良いんです。デビュー48年を迎えている松前ひろ子が2017年1月25日にセルフカバー曲「月の帯」を出している。23年前にソニーレコードから出したアルバムに収録した楽曲で、当時からお気に入りの1曲だった。徳間に移籍後も事あるごとにシングルカットを申し出ていたが、今回、漸く実現した。作詞家の故・松井由利夫の文学的な詞を歌うことで松前は、2年後のデビュー50年を見据えてのステップにしたい、と話している。











 23年ぶりに新録音した「月の帯」は「まるでドラマの中に入り込んでしまうようで、素敵な歌です」と、ファンからはそんな声が聞こえてくる。
 そうした声に松前は目を細めている。
 デビューから48年になる松前は<夫婦もの>1本と言われるほどに、夫婦演歌を歌い続けてきた。いつの間にかそれは彼女の代名詞になっていた。
 「3番にある ♪ 肌になごりの 紅の月 ~ は、肌についた口紅のあとを意味しますが、このような言い回しは松井先生ならではでしょう。こういう歌こそ、歌ってみたい、と思っていたんです」

 もちろん「月の帯」を収録したアルバムの中には男歌や酒場歌など、彼女にとっての実験的な楽曲は数多くあった。中でも、それは格別な存在だったのだが、それでもシングルカットされることはなかった。

 そんなに気に入っていた楽曲てあったが、自身のコンサートやライブなどで、「月の帯」は1度も歌ったことがなかった。新曲を売らなければ、といった想いが強かったからである。
 毎年、新曲の企画がもちあがると松前は、この楽曲はどうかと提案したが、レコード会社からは「同じなら新しい楽曲を作ろう」と、意見は取り入れられずにきた。

 ところがデビュー50年を目の前にした去年、様子が変わってきた「今までのような金太郎飴のように、松前ひろ子の歌はどこを切っても同じ夫婦演歌ばかり、といったことから抜け出て、色んな引き出しを打ち出したい」と、ディレクターに熱く訴えた彼女の想いが、今回は運良く聞き入れられた。

 「月の帯」は、松井の作品にしては珍しいともいわれる、女性の切ない恋心を情熱的に描いてある。1番の歌い始めは ♪ まるい月さえ 日毎にやせて いつか淋しや 眉の月 ~ と、時間の流れを感じさせるとともに、来ぬ人を待ち焦がれる女性の切なさが浮かんでくるようである。
 松前は代表曲へと押し上げていく意気込みを見せるかのように歌う。

 詞はもちろんのこと、メロディーも20年余の時間を経過した古さは一向に感じられず、むしろ「時を経過していますが、斬新な作品だと思います」と松前はいう。
 カップリングの「北へ行く女」も、同じアルバムに収録されていた。同じく松井の作詞である。作曲はいずれも松前の夫である中村典正が山口ひろしの名前で書いている



 デビュー50年に向けての計画は?
 「どんな路線の歌を歌っていくかは分かりませんが、1年1作の新曲を今まで通り守り、ディナーショーやライブを開いていく」としている。そして今年は「月の帯」カラオケ大会を開き、グランプリに選ばれた1人を11月中旬頃、東京都内のスタジオで体験レコーディングし、CDをプレゼントすることになっている。
 第2弾、第3弾の企画が楽しみである。


[松前ひろ子 オフィシャルサイト]
http://www005.upp.so-net.ne.jp/h-matsumae/
[松前ひろ子 日本クラウン]
http://www.tkma.co.jp/enka_top/matsumae.html