◆「日本に女形の歌手、北岡ひろしがいることを知ってほしい」日本で唯一で、初の女形で歌い踊る演歌歌手である徳間ジャパンコミュニケーションズの北岡ひろしは、そのように自信いっぱいに語る。今から10年ほど前から、カラオケの普及で素人がプロ顔負けの歌を聴かせるようになってきた。まだスーツ姿で歌う、ごく普通の男性歌手であった彼は「これからは特徴がないと歌手として生き残れなくなる」と考えて、子供の頃から日舞を習っていた経験を生かして、女形で歌うことにしたのである。2017年7月には2年ぶりの新曲「薔薇ものがたり」を出した。








北岡ひろし

 「僕の生の舞台を見てほしいですね」
 確かに北岡ひろしのエンターティナーとしての魅力はライブが最も良く伝わる。
 衣装こそ着けていないものの、物腰柔らかくインタビューに応えて話す、その仕草は女性そのものであった。
 しかも新曲「薔薇ものがたり」の ♪ 痛さこらえりゃ 恍惚の 涙はらはら きぬぎぬの ~ と志賀大介の詞を歌う彼は、何とも言えず妖艶である。

 志賀の詞を歌うのは今回が初めてだという。志賀と言えば男っぽい作品をイメージしがちだが、今作では「ドキッとする表現も多く、しかも女性の本心を抉るような作品」(北岡)という。しかも弦哲也によるカルメン調メロディーは、どこか身にしみいってくるようでもある。

 女形の北岡はそれを見事に演じ、聴かせるのである。
 しかし彼はれっきとした男性である。周りの人たちも彼について「酒の飲みっぷりもいいし、男の中の男といった性格ですよ」と笑うほどである。
 しかし女形を演じるためには、並々ならない努力もあるようだ。日舞にお茶といった習い事は言うまでもなく、女優のDVDを見てその所作を学ぶのだという。
 「女優の岡田茉莉子さんは、女優とは女に優れると書きます、と言っていた。ですから女性よりも女らしさを身につけなければ」(北岡)

■目指すNHK大阪ホールでのコンサート

 「この新曲をいい形に持っていって、ヒットにつなげたい」
 北岡は「薔薇ものがたり」に、今までになく並々ならぬ力を入れる。10数年ぶりに久々の大阪でのマスコミ出演などのキャンペーンを行ったのも、そのひとつである。

 そのひとつ、関西で放映されている歌番組の収録にも出演した。
 そこで再会したのが、日本クラウンの歌手、木下結子だった。彼女とはデビューが同じ1984(昭和59)年で、レコード会社も日本コロムビアで一緒だった。大阪でのテレビ収録で10年ぶりに顔を合わせたわけで、昔話に花を咲かせた。
 「毎年、レコードメーカーのカレンダー用の写真を撮影するのですが、新人の僕たちはいつも6人揃ってあまり目立たないページでしたよ」
 そんな新人の頃を思い出していた。





 北岡は山形県鶴岡市出身で、活動の多くは関東地区だが、1997(平成9)年に大阪府枚方市の天野川に架る、かささぎ橋をモチーフにした「かささぎ橋」を歌っている。それを機に大阪でのキャンペーンなど活動を増やしてきたが、99(平成11)年には旧大阪厚生年金会館芸術ホールに満員の1100人を集めてコンサートを開いている。
 新曲「薔薇ものがたり」では、同寝屋川市のアルカスホールで2018年2月、久々に大阪でコンサートを開く。
 北岡はさらに「いずれはNHK大阪ホールの大会場でもコンサートを行いたい」と、夢を膨らませている。


[北岡ひろし オフィシャルサイト]
http://www.office-kitaoka.jp/
[北岡ひろし 徳間ジャパンコミュニケーションズ]
http://www.tkma.co.jp/enka_top/kitaoka.html