「あなたの歌にはいつも螢が出てくるわね」
野中の母親が何気なく言った。
野中も「仁井谷先生に書いてもらった詞の中には、確かにすべて螢が盛り込まれています」と認めている。
偶然なのであろうか。
彼女自身がどこか儚げな雰囲気を感じさせるからなのだろう。作詞家の仁井谷は、その自らが描くイメージをずっと膨らませて作品に反映させてきた。
前作の「宗谷海峡」(2017年7月)制作時に、仁井谷が同時に提出した作品のひとつである。それを今回、30周年記念作品を制作するに際して、作曲家の徳久広司は「天の川恋歌」を含めて7作品を用意した。
野中をはじめ制作スタッフたちは、どれを記念作品にするかを検討したが、結論はなかなか出ず、改めて1週間後に決定することになった。
その間、野中は何度も対象曲を聴き比べた。ところが「いずれも頭の中に残るのは『天の川ー』なんです」と、登場する女性の古風なイメージが彼女の頭から離れなかった。
そんな野中の強い想いもあって、決定会議において新曲には「天の川恋歌」が選ばれた。
「天の川恋歌」は、とりわけ前半は力を抜いて歌っている。今までと同じ野中なのか、と思わせるほどである。後半の ♪ 夜空にかかる ~ からは盛り上げていくが、これとて従来の歌い上げる彼女のイメージとは程遠い。
「これによって演歌っぽくなくなっています。今まで演歌にはまったく興味がなかった同世代の人たちにも聴いてもらえるように敷居を低くしています。30周年を迎えた私だから挑戦できる歌です」
このように自信を見せる野中は、30周年を迎えたのを機に「心機一転、初心に返って頑張ります」と抱負を語っているように、それを具体的な形にしたのが新曲ある。
同時にまた、芸名を以前の彩央里からさおり、と本名と同じ平仮名に変更していしている。「以前から平仮名にして柔らかいイメージを作りたかったんです。呼び名は変わりませんし、ファンの方たちからはパソコンやスマートフォンで入力が簡単になった、と感謝されているんですよ」と笑う。芸名の変更とともに事務所も移籍して、15年間付き合ってきたマネージャーも変わった。
■ヒットへのスマッシュ
野中はまたブログをスタートせている。自身のプロフィールの欄に卓球を書き込んでいるが、2ヶ月前から始めたものである。卓球はプロはだしという事務所の担当プロデューサーの影響だが、「初心者の割には上手いですね。相手のコートにうまく入っています」とはプロデューサー氏の評価である。
中学時代には剣道部で剣道に打ち込んでいた〈武道女子〉だった。白の道着と赤い胴への憧れもあったが「民謡教室でもそうだったんですが、掛け声だけは上手かったんですよ。土曜、日曜の練習はカラオケ大会で忙しいと言って、部活は休んいましたど」と野中。
初めて間もない卓球は「まだ2回しかしてないんです」というが、「天の川恋歌」のヒットを念じて、大きな掛け声と共にスマッシュを決めたいところである。
[野中さおり オフィシャルサイト]
http://www.actrus.jp/saorinonaka/
[野中さおり オフィシャルブログ・たまて箱]
https://ameblo.jp/saori-nonaka/
[野中さおり 徳間ジャパンコミュニケーションズ]
http://www.tkma.co.jp/enka_top/nonaka.html