門倉有希 = 写真・左 = と聞くと、どうしてか<大阪の女>のイメージが付きまとう。今回の新曲「放されて/情熱」を歌う彼女も、大阪の色を強く感じてしまう。ところが生まれは南東北の福島県だという。確かに言葉のイントネーションは、大阪ではないことは確かなのだが、不思議と大阪の女のにおいがする。そんな新曲は、2010年6月23日に発売されてから好調な売れ行きを見せているという。







 「大阪はいい街ですね」
 と話す門倉。うどん、お好み焼き、たこ焼など食べるものは何でもおいしい大阪が大好きだという。「気が短いのが大阪人の性格なのか、どれも早く食べられるのがいい」と、自分の気性と合っているようだ。

 そんな大阪人気質からなのだろうか。
 大阪の女を歌った新曲「放されて」は、1984年9月に大阪府出身の木下結子がデビューシングルとして歌って人気を博した曲のカバーだが、門倉は見事に<大阪の女>を歌い、演じている。
 1番の<私(うち)はやっぱり、演歌です>と歌うところは、強がりを見せているけれど、本当は弱い女であることを良く表現している。


 曲は男性から捨てられた女性を歌ったものだ。自分を振った男性のことが堪らなく好きだけども、強がって突っ張っている。でも、内心はすこぶる弱い性格の女性が主人公である。

 こうしたストーリーが、門倉のファン層に多い中高年層の心を引きつけるのだろう。
 かつての「ノラ」がそうだったように、新曲も中高年の男性の支持が多い。

 「たくさんの男性に口ずさんでもらており、ファンからの反応はいいですね」と門倉。







 「私が歌の中で描いているのは、きれい系な女性でしょうか。自分とは全然違うけれども(笑)。今まで自分にはない女性像ばかりを歌ってきました。私は熱しやすくて冷めやすいんです。いつまでもウジウジと思い続けないタイプかな。同世代には、こうした女性が多くて、さっぱりしていますよ」


 去年、東京で行ったカバーライブで歌った昭和の名曲の中に入れた1曲が、この「放されて」だった。
 木下結子が歌った後、85年11月にはニックニューサーがカバーしているほか、引き続いてちあきなおみなどの歌手もがカバーしている。
 そんな名曲と言わる歌を門倉がカバーしたのは、カバーライブ以降、ファンからシングルカットの要望が多く寄せられたからだという。

 「<放かされて>は、ずっと前から歌っていたオリジナル曲のような感じで、まったく違和感なく自然体で歌っています」

 カップリングにはライヴで好評な「情熱」を収録。この楽曲は2008年2月発売のDVD「門倉有希LIVE~J-Style」にだけ収録されていた。やはりファンからCD化を待ち望まれていた作品だ。

 両曲ともに関西での反響は大きく、これをきっかけに関西でのキャンペーンにも力を入れるという。10月20日には兵庫県西宮市の阪急西宮ガーデンズでキャンペーンを実施しているし、11月12日には大阪・難波で「オータムディナーライブ」に出演した。





 歌には<あかん、あかん>とか、<おんなやもん>が何度となく出てくる。いずれも東北の彼女にとっては、馴染みのないイントネーションの言葉であるという。とりわけ語尾の<ん>が、発音し辛かったとも。
 それにタイトルの<放かす>という言葉の意味が、当初はまったくわからなかった。シングルカットが決まって、初めて教えてもらって知ったという。

 関東や東北でのステージでは必ず、「タイトルの<放かされて>の放かされるとは<捨てられる>の意味であることを、わざわざ説明しています」



 カバーだけではなく、門倉自身の新たな世界を作り、次世代のファンを育てようといった試みにも意欲的だ。
 昨年発表したアルバム「短編小説」がそれだ。
 同世代の女性に向けた10曲を収録し、そのすべてを荒木とよひさが作詞している。いずれの曲も等身大の彼女を歌ったものだ。
 今までのファン層が持っているイメージから脱却するかのような、新しい門倉有希を目指している。いろんなコンサートやライブなどでは、収録曲の中から数曲を織り交ぜて披露しているという。

 「同世代の女性に聴いてもらいたい曲ばかりです。私の新たな挑戦なのです」



 来年は細かくライブハウスを回って、「放されて」を含めて1人ひとりのファンに、歌を伝えていくことを地道にこなす考えだ。「新たなチャレンジも東京で見せたいと思っています」



[YUKI KADOKURA]
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