ステージの大江裕に〈サブちゃ〜ん〉とかけ声が寄せられる。彼は「好きな先生に1歩でも半歩でも近づいたような気がしてうれしい」と、心の内を明かす。その大江に北島は「80代の俺の真似をするな。20代の自分の色を出してお前の歌を歌え」と諭す。
大江らしい色とはー。
勢いがあって、優しさだという。28歳なりの経験からの感情を込めて歌う大江だが「込め過ぎるとどうしても先生(北島)に似てしまうんです」と笑う。
北島からは、これを歌うに際して今まで歌ってきた10年間の癖をすべて取るように、とアドバイスされている。
2017年は北島が所有する競走馬・キタサンブラックが大活躍した年でもあった。その年末、北島は大江たちに向かって「来年はお前たちが活躍する年だから」と、それぞれに意気込みを語らせた。
大江は「檜舞台に立ちたいです」と、持ち前の大きな声で夢を話した。
ところが北島は「いつも立っているステージが檜舞台だろう。勘違いしてはいかん。毎日を大切にするように」とたしなめたという。
それまでの大江は、大劇場での1ヶ月公演やワンマンショーを演り、全国ツアーが出来るようになることが檜舞台だとばかり考えていたから、すでに自分が檜舞台に立たせてもらっていることが分からなかったのである。北島が「大樹のように」を彼にプレゼントしたのも頷ける。
「大樹にとっては10年など、まだ根っ子なんですね。10年を過ぎるとようやく芽が出て、成長することも教えられました」
大江には大好きな北島はまさに人生の師と言っても良いようである。
と言っても、北島から歌唱指導を受けることはない。教えられるのは「歌で大事なのは気持ちである。自分の気持ちをステージから思い切り投げかけて、相手(客)とのキャッチボールから学べ。他人にからは良いところ盗め」や礼儀・作法、受けた恩義は忘れるなーといったことばかりである。
■北山兄弟でジョイントツアー
同じ北島音楽事務所に所属する北山たけしが今年、デビュー15周年を迎えている。大江はその北山と2人で「北山兄弟」を名乗り、今年5月から全国約40会場でジョイントツアーコンサートを開く。会場はいずれも収容人員が1500〜2000人という規模になるという。
スタートは5月の愛知県刈谷市。2人のオリジナル曲のほか師匠北島の歌を歌って盛り上げる。初めてコントにも挑戦する。「芝居は苦手なんです。歌詞と違って、台詞は覚えられないしね」という笑う大江。地元大阪では来年になってからの公演になるという。
[大江裕 オフィシャルサイト]
http://www.kitajima-music.co.jp/yutaka/
[大江裕 日本クラウン]
http://www.crownrecord.co.jp/artist/ohe/whats.html