切ない別れを歌った「おもかげ」は、「望郷縁歌」「哀愁子守唄」と続いた前2作品とは違う。和田青児にとっては今までになかったテーマである。
ところがキーとテンポ、さらにはいずれも5行詞であることなど、ヒットした今までの2作品を踏襲したところもあり「支援してくれたファンが期待するカラーを残した」のが今作でもあった。
ここ数年でギターと譜面を書くことを覚えたこともあって、オリジナル曲をいくつか書きためていた。2015年に出した「男の懺悔(ざんげ)」のカップリング曲「心 〜こころ〜」で、自ら作詞・作曲した作品を初めて世に送り出した。以来、今作まで11作品がリリースされており、和田青児は誰もが認めるシンガーソングライターなのである。
和田がこれまで歌ってきた作品の中には、今作のような別れをテーマにした悲恋ものは少なかった。どちらかと言えば、前向きに周りを元気にしてくれる作品が主流だった。今年7月には50歳になることから「『おもかげ』のような、切ない歌にも向き合っていかなければ」と、新しい引き出しを作った。
1番の2行目に ♪ 赤い花 赤い花 〜 と、同じ言葉を2回繰り返す部分がある。言葉は変わるが、2番3番にも同じ繰り返しがある。聴いていて心地が良くなる箇所でもある。
「楽曲を作る際には自己満足にならないことを心掛け、歌う人に喜んでもらえるように書くように務めています。カラオケ発表会にゲストで招かれた時などは、歌う人の好みのを探るヒントになります」
こうした積み重ねがヒット作につながっているようである。
北島三郎の北島音楽事務所に23年間、独立して8年になる。北島の下では「歌うこと学ぶと共に、ピアノ前に座る先生の姿を見て歌を作ることを勉強した」という。当時はレコーディングも1日で終わらず、デビュー曲の「上野発」は3日間にも及んだ。
レッスンでは歌詞を1行ずつ北島が歌う通りに歌っていく。「真似ないとOKが出ない」から、自然と歌は似てくる。
今、和田は「売れる歌よりも喜んで歌ってもらえる作品作りにこだわっていきたい。そうすれば後から自然と売れてくる」と考える。
これは、すかいらーくの創業者の1人として知られる横川竟(きわむ)の言葉を参考に、自ら考え出した作品作りのためのガイドラインである。
「レストランも歌(CD)の世界も同じなんですね。買ってくれる人のことを考えると、良いものが出来ます」
ファンの声に多く耳を傾け続けているのも、そのためなのである。
[和田青児 オフィシャルサイト]
http://www.seiji-wada.com/
[和田青児 日本クラウン]
http://www.crownrecord.co.jp/artist/wada/whats.html