この日、高橋はブラジルで好評を博したという紅花柄の帯地を正面縦に配した真っ黒のドレスで登場した。
戦争を検証するのを目的に選曲したという「モンテンルパの夜は更けて」は、昭和27年に大ヒットした。この歌はフィリピン、マニラ郊外のモンテンルパ刑務所の日本人死刑囚が、作詞作曲した歌とされている。
戦時中の戦地慰問で自分も戦意を煽った責任があると感じた渡辺はま子は、同年、モンテンルパで着物姿で歌ぅたという。これがきっかけとなって、当時のフィリピン国大統領は「戦争は憎いが、こんなに優しく悲しい歌を作る人たちも日本人だ」として、戦犯を減刑などの特赦を与えたという。
高橋は、そうしたエピソードを説明するとともに歌った。
このほかにも作曲家吉田正のデビュー作で、彼が捕虜収容所で披露したのが最初という「異国の丘」も歌った。復員兵がNHKのど自慢で歌って世に出たとされている。
この歌は、サラエボを舞台に、戦争で失った家族の幸せを取り戻そう、という内容。高橋の新たな代表曲として期待されている。
イベントではまた、宝塚大学の朝野富三教授が「三畳小屋の伝言 陸軍大将今村均の戦後」と題して、今村氏が1968(昭和43)年に82歳で亡くなるまで、戦後の日本と日本人を見届けようとした姿を語り「戦争を伝承して行く必要がある」などと話した。
[高橋樺子 徳間ジャパンコミュニケーションズ]
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