岩本公水が2014年10月23日、大阪市中央区のIMPホールでデビュー20周年記念コンサート 〜 うたこまち 〜 を開いた。秋田、北海道、鹿児島会場に次ぐもので、6月に出したカバーアルバム「うたこまち ~ 昭和歌の語りべ ~ 」(15曲収録)の中から7曲のほか、最新曲の「道の駅」などオリジナル曲も10曲を披露した。歌好きでいろんなコンテストに出ていた子ども時代から、念願のデビュー、心折れての休業、そして復帰という歌い手としての歩みを歌とトークで綴った約2時間だった。




 岩本公水も自らバチを持って威勢のいい和太鼓の音で幕開けしたコンサート。最初の曲はアルバム「うたこまち ~ 昭和歌の語りべ ~ 」の収録曲から「冬の華」(ちあきなおみ)と「漁歌」(北原ミレイ)。
 アルバムは最新曲「道の駅」を作曲した船村徹の作品を6曲も収録している。この日は収録曲からはオープニングの2曲のほか、岩本が中でも最も好きだという「哀愁のからまつ林」(島倉千代子)「紅とんぼ」(ちあきなおみ)も歌った。さらに「哀愁波止場」(美空ひばり)「風雪流れ旅」(北島三郎)など、自ら難しい歌という船村作品にも挑戦した。



 岩本は秋田県羽後町出身。幼い時から歌が大好きで、毎年春に出稼ぎから帰ってくる父親に歌を褒めてもらうのが嬉しくて仕方なかったという。テレビのコンテスト番組では都はるみの「好きになった人」を歌い、錚々たる審査員のプロ歌手をタジタジとさせるなど、行く先々で大人を驚かす歌唱を披露して早くから<歌い手>としての存在感を示していた。




 歌手を目指して上京。1年間のOLを経験してプロデビューを果たす。デビュー2年目にはNHKの「歌謡新人コンテスト」でグランプリを受賞して、その年の紅白歌合戦に出場している。
 そんな折々に歌い、耳にしてきた歌の中から水前寺清子の「大勝負」、高橋真梨子の「五番街のマリー」などを歌い、第7回NHK新人歌謡コンテストで歌ったオリジナル曲「涙唱」も披露した。

 歌から離れた休業時代に岩本の母親は「ゆっくりと休みなさい」と優しい言葉をかけてくれたという。その母を歌ったのが、12年に出した「こまくさ帰行」のカップリングに収録した「姫鏡台」だった。鹿児島から秋田に嫁いできた母親が大切にしていたのがひとつの鏡台だったという。
 鏡台の前に座る母の姿を想い浮かべて歌った岩本は「泣いてしまいました」と正直に告げた。ハンカチで涙をぬぐう彼女にはファンから声援が飛んでいた。休業は2年半に及ぶが、これが歌手として一段と成長させたようだ。
 復帰後の彼女への業界関係者の評価はそれまでを上回り、さらに歌に表現力を付けるようになっていったようだ。




 この日のコンサートでは復帰第一弾の「草枕」(07年)以降の代表作品から「文鳥」「泣きむし橋」なども歌った。デビュー曲「雪花火」を作詞した吉岡治は、彼女の最初で最後の求めに応じて秋田・田沢湖に伝わる伝説をモチーフに「辰子伝説」を、病院のベッドで書いている。この忘れられない1曲も聴かせてくれた。

 岩本にとって初めての船村徹作品の最新曲「道の駅」は、今年1月の発売後10ヶ月も歌い続けている。半年サイクルの新曲発売が通例のレコード業界にあっては珍しいケースである。
「いい歌をもらったと思っています。歌えば歌うほど好きになり、ずっと長く歌い続けていきたい」と岩本。



 あらゆる歌を見事に歌いこなす力量は、コンサート終了後の満足感を大いに高めてくれた。彼女も「難しくても良い歌を聴き、私の中に取り込んでいくことでいい歌手になりたいと思います」と話し、アンコール曲の「木漏れ日に包まれて」まで、全力投球で歌い切った。

 デビュー20周年記念コンサートはこのあと11月17日、東京・浅草公会堂でも開かれる。


[岩本公水 オフィシャルサイト]
http://iwamotokumi.com/
[岩本公水 キングレコード]
http://www.kingrecords.co.jp/cs/artist/artist.aspx?artist=10094