表現者にはオリジナリティが求められる。五島の最大の個性はビブラートである、とまだ高校生だった彼女を見出したのは作詞家の星野哲郎ともず昌平であった。その悲しげな声が印象的だった。
それを演歌「雪国情歌」では、こぶしを使わずに、彼女の持ち味とも言えるビブラートで、雪国の女性の強さと哀しみを存分に表現する。
それはすでに前作の「北離愁」で現れ始めていたが、発売半年で声が出ずらくなる症状が現れて、ステージはを務めるのも辛くなる状態に襲われた。いくつか病院を回り、有名病院でもその原因は突き止められなかった。ようやくインターネットで治療ノウハウを持つ病院を見つけたのは、発症から3年が過ぎていた。
「雪国情歌」を出すまでに4年のブランクがあったのには、そのような理由があった。今も通院を続ける。聖川は「不安も残るが、90パーセントまで回復している」とし、五島も「聴く人に伝えられるように歌えるようになりました」と自信を見せる。
ところで前作「北離愁」は、作詞者の山田孝雄によれば主人公の女性は吉永小百合をイメージして書いたという。小樽を舞台に、凛とした女性が男性と別れを告げるバラードである。この歌で五島は初めて衣装を着物にしている。姉弟子の香西かおりに着付けを習ったという。
今作では再びドレスに戻し、肩を露出しての熱唱である。そんな姿にも新曲への彼女の意気込みを感じる。
■ジャズワルツのメロディーで長崎を歌う
五島は長崎県五島市(旧福江市)出身。五島列島のひとつで「時がゆったりと過ぎる癒しの島」(五島つばき)で、芸名の五島つばきはもずが命名している。五島市の花、ヤブツバキから採った。
島で唯一の空港の名称は3年前に福江空港から「五島つばき空港」に変更されているのもPR効果を高める。人名を冠した空港は高知の龍馬空港と2ヶ所だけだとか。ただ市の花の名前でもあるのだが。
「雪国情歌」のカップリング曲「長崎オロロンバイ」は、タイトル通りに地元長崎を歌っている。そのメロディーを五島は「ジャズワルツ」と呼び、聴く人の中には「隠れキリシタンの街でもある長崎の風景が浮かんでくるようで、また懐かしく感じてくれているようです」と、反響は上々だという。
以前から長崎の歌を歌って欲しいといった要望は多かった。ギヤマン切子など長崎風情を漂わす歌詞は「地元の反応も全然違いますね」(五島)と笑みを見せる。
五島つばきの歌と社会活動を説明する聖川湧
一方、五島はデビュー当時から社会を明るくする運動を続けている。音楽で社会貢献しようというものである。デビュー曲「ひまわりの譜(うた)」は、運動の応援歌でもある。さらに去年5月には東京都大田区から保護司を任命されており、歌手であるとともにもうひとつの顔を持って社会活動を続けている。
[五島つばき オフィシャルサイト]
https://blogs.yahoo.co.jp/tubaki10gotou10
[五島つばき 日本クラウン]
http://www.crownrecord.co.jp/artist/goto/whats.html