「運命の女」は安倍里葎子のデビュー記念日である8月1日にリリースされた。45周年を控えての記念曲でもある。もともと女性ファンをターゲットにした楽曲が多かったが、今作はより女性を意識した詞とメロディーになっている。
「3年間はじっくりと歌い続けたいですね。皆さんに知ってもらえるにはやはりそれぐらいは必要でしょう」
息きの長い楽曲へと育て上げたい考えをみせる。
カップリングの「ONE NIGHT LOVE」は、作詞が荒木とよひさ、作曲が平尾昌晃、編曲が竜崎孝路。しかも平尾とのデュエット曲である。
安倍が高校を卒業して札幌の音楽喫茶で歌っていた時にスカウトしたのが平尾で、歌手としてデビューするきっかけを作っているだけに思い入れも強い、
大阪からヒットしたデビュー曲
デビュー当初の安倍は大阪でひんぱんに歌っていた。暑い関西の夏にもかかわらず、休みもなくレコード店などでのキャンペーンをこまめに歩いたという。そんな努力もあって「レコード店からは可愛がられた」ようで、デビュー曲の「愛のきずな」はその年の第12回日本レコード大賞新人賞を受賞している。
この曲の販売枚数は50万枚を突破したが「大阪からヒットの火がついたと言っても間違いじゃないです」と安倍。
翌年に出した「愛のおもいで」などもヒットしたが、その後は続かなかった。
大ヒットの後の挫折感はあったものの、それでも休むことなく歌い続けた。もちろん歌手をやめようとも思わなかった。
転機となったのが1983年に出した橋幸夫とのデュエット曲「今夜は離さない」であった。
これが久々のヒットとなって蘇ったのである。はずみを付けた安倍は<デュエットの女王>といった異名を取るようになる。橋に続いて今までに松方弘樹、桜木健一、林与一、誠直也などともデュエット曲を発表して話題を作ってきた。
他人がやらないこと
このあと94年に、安倍は初めてのヘアヌード写真集「Decade」(スコラ社刊)を出版して、歌謡界を驚かせた。トルコのイスタンブールで写真家の石黒健治が撮ったもので、3万部は売れたという。
これを撮る数年前、大阪で新聞記者から取材を受けているが「歌が上手いのは歌手として当たり前、それでは記事にならないから、他人と違う目立つことをやらないと、言われたんです」という。
この言葉で脱いだわけでもないが「NHK紅白歌合戦には一度も出場していないのも、これが原因しているのかもしれませんね」と笑う。
他人のやらないこと-の言葉が引き金になったかのように、いつも安倍は挑戦的である。
有言実行をモットーにする彼女は「努力して歌っていれば、」と、内に秘めた強い情熱はデビュー当時と一向に変わらない。
昨年に収録したものです
[安倍里葎子 フリーボード]
http://www.freeboard.co.jp/pro/aberitsuko.html