◆約2年ぶりに新曲「忘れ雪」を2015年6月24日に出した野中彩央里。デビューは平成元(1989)年だから、今年で27年目のベテランである。平成6(94)年に出した「雪国恋人形」が15万枚を記録するなどしたが、ここ数年はヒットからは遠ざかっていた。新曲では彼女が得意とするファルセット(裏声)を生かした歌声が一段と艶やかさを増している。発売に先駆けて22日、東京・元赤坂の明治記念館で開かれた新曲発表会で野中は「『桜梅桃李(おうばいとうり)』という好きな言葉が表すように、(新曲で)自分らしい花を咲かせられるように精いっぱいがんばります」と、久方ぶりのヒットへ向けて意欲を示した。












 「忘れ雪」(作詞・仁井谷俊也、作曲・徳久広司、編曲・丸山雅仁)は、野中にとってデビュー曲「やらんかい」から数えて24枚目のシングルになる。ファルセットを用いた新曲は、彼女の歌の大きな特徴でもあり、ステージにおける歌唱姿とともに色っぽさをますます高めている。
 野中が「1番から3番まで、いずれも最後の詞 ♪ ~忘れ~雪~ は膝が崩れれるように歌うように、と徳久先生からアドバイスをいただきました」と話すように、彼女の真骨頂を見せるところである。




















 イントロにはテナーサックスが用いられている。これは徳久の丸山への挑戦でもあった。
 丸山はそれを「裏声に変るところが彼女の色っぽさを増すところだが、それをぶち壊すようにサックスを使う徳久さんのアイディアを、どう哀しい恋歌に仕上げるかが課題だった」と、野中の艶やかさを演出するのに腐心したようだ。

 とても女性っぽく可愛い声と評される野中だが、素顔の彼女は実に良く笑う。まるで女学生のように屈託ががない。その反面、デビューしてからの27年は「何度もくじけそうになりました。そのたびに周りのみなさんの顔が浮んできては元気づけられました」(野中)と、山も谷もあった歳月だった。




 彼女の歌の上手さには定評があり、ファルセットの魅力もこの上ない。ところがいま一つヒットにつながらない。「このまま終わらせるべき歌手ではない」(仁井谷)といった周りの声もあって、昨年暮れあたりから野中の代表作になるような作品作りの話が持ち上がった。
 とくに徳久は正月返上で曲作りに取り組んだというほどに力を込めた。

 発表会の席上、レコード会社の徳間ジャパンコミュニケーションズの白石博一制作宣伝本部長も「演歌の文化を次世代に引き継ぐ担い手として野中彩央里を推して行きたい」と、強力にアピールしていくことを強調していた。

30周年へのスタートの歌


 野中は昨年から所属事務所をNフォーレター(千葉県柏市)に移している。発表会に顔を見せた大久保邦和社長は「野中の歌を聴くと勇気や元気が出ます。歌のサプリメントと思っています。心と心で対話できる歌を野中を通じてお届けしていきます」と話した。


大久保社長

白石本部長

 新曲「忘れ雪」の披露した野中は、続いて代表曲の「雪国恋人形」「郡上恋唄」、新曲のカップリング曲「籠の鳥」も歌って、終始、満面の笑みを浮かべていた。
 自分らしい花を咲かせたいという野中だが「この新曲をもって、来たるべき30周年に向けてスタートを切ります」と、決意を語った。



仁井谷俊也

徳久広司

丸山雅仁


[野中彩央里 徳間ジャパンコミュニケーションズ]
http://www.tkma.co.jp/enka/nonaka/