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河内音頭のルーツを訪ねた雨中の「第28回歌を歩く」 八尾〜瓢箪山 [イベント]

◆歌手の生駒尚子と言えば、鉄砲光三郎と共に一世を風靡した河内音頭の音頭取り生駒一の長女である。今では大阪・東大阪を拠点に父の跡を継いで河内音頭の音頭取りも務める。2023年5月13日、彼女にナビゲーターをお願いして、午後から降り始めた雨の中約20キロを歩いて、河内音頭ゆかりの土地をめぐった。

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 「歌を歩く」は歌の舞台となった土地を訪ねて、歌の背景や歴史を知ろうというものである。2020年7月から始めている。今回は河内音頭のルーツを訪ねるーをテーマに大阪・八尾から東大阪を歩いた。

 大阪の八尾、東大阪には河内音頭ゆかりの地が数多くある。中でも八尾市本町にある常光寺は、河内音頭発祥の地として知られている。

 河内音頭とは盆踊りの音頭であるが、その境内では夏になれば盆踊りが催されているのであろうと、すぐに想像がつくほどに広く、鉄棒や遊具が置かれていて普段は近所の子供たちの格好の遊び場のようでもある。

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 この寺は奈良時代初期の開創と伝えられており、その歴史はかなり古い。おおさか13佛霊場第5番と札が掛かっている通り、霊験あらたかな寺として市民に親しまれている。

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 常光寺の存在はすぐ近くのアーケードに覆われたファミリーロード商店街にある、CDショップの跡を利用して2012年にオープンした「河内音頭記念館」の女性から教えてもらった。

 その記念館には河内音頭のレコードや本、グッズ、それに館長である河内家菊水丸の衣装や愛用ギターなど、ありとあらゆる関連資料が展示されている。河内家菊水丸は不定期ではあるが河内音頭の踊り方などを教えるセミナーを開いており、すでに103回を数えるまでになっているという。

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 ナビゲーターの生駒尚子も自身が運営するライブホールMu's in 705で同様な河内音頭教室を開いているなど、八尾・東大阪では河内音頭普及に向けた草の根活動が盛んに行われている。

 盆踊りの音頭であった河内音頭も、昭和に入ると、取り分け戦後、メロディーや節など浪曲の要素を取り入れられるようになった。それに伴い、徐々にアップテンポでリズミカルなメロディーへと変化するようになり、今の河内音頭が出来上がっていったようである。

 生駒一の娘、尚子がまだ小学生であった頃、一に弟子入りしてきたのが、スポーツ刈りが似合う高校生の河内家菊水丸である。
 彼は今、一の跡を継ぐ河内音頭の第1人者である。小学生の頃から一に付いて歩き、高校3年の時にプロデビューしている。
 「最初の丸3年間は一師匠の元でギターを弾いていました。今の髪型も師匠を似せたものです」というほど、一から多大な影響を受けている。

■八尾から東大阪・瓢箪山へ

 時代は遡って太平洋戦争後、河内音頭の普及に尽力した1人の音頭取りがいた。〈音頭取りの萬ちゃん〉と親しまれた河内家廣春がその人である。

 幼くして正調河内音頭、江州音頭、やんれ節を習得したと言われている。戦後、多くの弟子を育成したといい、東大阪市上四条町16、近鉄瓢箪山駅から歩いて10分程度の所にある四条墓地には、河内家廣春の功績を称えた霊碑が建てられている。

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 我々は常光寺からその霊碑を目指して歩くことにした。近鉄八尾駅から同山本駅、そこから桜並木で有名な玉串川沿いの遊歩道を近鉄東花園駅に向けて歩を進めた。

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 春であれば満開の桜を見ながらのウォーキングとなったはずだが、すでに季節は新緑の頃。しかもこの日は八尾駅を出た直後から降り始めた雨のため、傘を差しながら歩くことになった。
 この遊歩道は東花園の手前を東西に流れる第2寝屋川近くまで続いていた。花見シーズンにはたくさんの人たちで賑わうという。


■坂道を〈迷走〉

 当初の予定では東花園駅まで行き、そこから近鉄電車の高架に沿って瓢箪山駅まで進み、そこから四条墓地を目指すことにしていた。ところが地元の参加者から「第2寝屋川沿いに歩いた方がいい」といった提案があり、それを取り入れることにした。

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 結果的にそれは墓地までの道を分かりづらいくすることになった。雨が降る中、坂道を〈迷走〉することになったのである。
 ナビゲーターの生駒尚子さんが交番に飛び込んで、居合わせた警察官から大体の場所を聞き、なんとか墓地へたどり着いた。

 が、そこからが霊碑を探すのがまた大変であった。墓地内を歩き回って、やっとSさんが「これや、あった」と見つけたのである。しかしそれは意外と小さく、下手をすると見逃してしまいそうなものであった。

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 それでも大阪平野を一望できるそこに建っている碑は、大阪を代表する伝承芸能の普及に尽力した功績を称えるのに相応しく感じられた。
 そこには功績と共に「亡き師を慕い碑を建立いたします」と書かれていた。
 ただしそれがいつ建てられたのかは日付けがなく、不明であった。

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次回「第29回歌を歩く」は9月に開催予定。

※写真・記事の無断使用はお断りします。








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