冠二郎（日本コロムビア） 新メロディーラインに挑戦する新曲「旅路の果て」

◆「命ひとつ」で1967（昭和42）年11月にデビューして今年で45年になるベテラン歌手の冠二郎 ＝ 写真・左 ＝ 。好調に推移している2011年１月にリリースした新曲「旅路の果て」で、72枚目のシングルになる。その長い歌手生活では、人と出会うことによって＜気＞をもらってきたという。たくさんの人に会うことは「自分のパワーの源だ」とも言い、人との出会いを大切にする。いろんな出会いの中で、彼に最も大きな影響を与えているのは氷川きよしだった。そして今また、藤あや子との新たな出会いで冠は変わろうとしている。














　冠の師匠は作詞家の三浦康照である。今までに彼の多くの作品を手がけてきた。三浦との出会いがなければ、歌手・冠二郎はなかったかもしれない。
　しかしヒット曲に恵まれない長い期間を経て、1992年９月の「炎」（作詞・三浦康照、作曲・和田香苗、編曲・前田俊明）で、「アイ、アイ、アイライク演歌」の一節が話題になるなどして、ようやく脚光を浴びるきっかけの曲と巡り合った。
　それでも、歌手として手応えを感じられるようになったのは、ここ５年ほどのことだという。

　冠が影響を受けたと話す氷川が「箱根八里の半次郎」で世に出てきたのは、2000年２月である。伸びのある高音を張り上げて歌う彼は、たちまち女性のファン層を獲得していく。
　それを見ていた冠は「３ヶ月で追い越されていしまった、と思った」と、怪物のような後輩歌手が、冠にとっては「それまでの発声から歌い方まで、すべてに革命をもたらした」と映ったのだ。

　それまでの冠は「ヒット曲もあったが、これから先、このままで生き残っていけるのだろうか。中年女性層をファンに取り込めるのか」といった不安感が絶えず胸の中を覆っていた。
　それだけでなく「歌をやめたい」と思うほど、行き詰っていた深刻な状態だったようだ。
　プライドもかなぐり捨てて、氷川のビデオを観て＜中年の氷川きよし＞になるための研究をしたり、氷川の曲を手がけていた作曲家の水森英夫に「氷川のような声が出るだろうか」と尋ねてみるなど、冠二郎の＜改革＞を頼み込んでいる。
　もちろん長年の間に積み重ねたものを否定ししまうようで「葛藤もあった」のも事実だ。それでも「自分を無色にして教えられる通りに歌った」と冠。

　それがきっかけで、水森には05年６月にリリースした「ほろよい酔虎伝」（作詞・三浦康照、編曲・南郷達也）で作曲をしてもらっている。以後、水森とは「ブラボー酔虎伝」（同）「浪花酔虎伝」と水滸伝シリーズを出し、ヒットにつなげた。

小野彩と作る新しいメロディーライン

　今また、新たな出会いが冠の心を揺らしている。
　作曲家小野彩（このさい）との出会いがそれである。小野彩は歌手藤あや子のペーンネームであることは、よく知られている。
　最新曲「旅路の果て」は小野彩が作曲を手がけている。この曲で彼女が提供した楽曲は４曲目になるという。
　今までの冠のイメージをガラリと変えるような「女性ならではのメロディーラインで、ニュー歌謡曲」のようだ。

　冠の小野彩作品は、最初の曲が07年９月の「燎原の狼 ～若き日のジンギスカン～」（作詞・三浦康照、編曲・櫻庭伸幸）で、次いで09年３月の「流氷岬」（作詩・三浦康照、編曲・櫻庭伸幸）、そのカップリング曲の「木漏れ日」（作詩/三浦康照、編曲・前田俊明）と続いている。
　いずれも評判のヒット曲である。

　冠の声を気に入っていた小野彩が希望して書いたと言われるが「最初は売れるとは思っていなかった」という冠だが、今では「音楽の良きパートナー」というまでになっている。
　いずれも「色気を感じさせる楽曲」に仕上がっている。

　藤（小野彩）と冠は、実はもともとつながりがあった。
　藤が1993年４月に出したヒット曲「むらさき雨情」は、師匠の三浦康照が作詞をしているなど、師匠つながりがあったのだ。
　小野彩の手元には、すでに出来上がっている冠に提供する曲が８曲もあるという。
　新たな出会いによって、冠は再び変わろうとしている。

　冠は「いつでも真剣です」と話す、人との出会いから歌手としての新たな＜気＞を吸収し、身体の中から出てくる＜電波＞のようなもので人々へと伝えている。
　そんな目に見えない何かが冠の歌を作っているようだ。



［冠二郎］
http://columbia.jp/artist-info/kammuri/

タグ：冠二郎 旅路の果て 日本コロムビア