日本初の薬剤師演歌歌手を目指す薬科大生、辻大貴さん 21日には道頓堀ＳＵＰＥＲ歌謡劇場デビュー

◆日本初の薬剤師演歌歌手になりたい－。大阪府高槻市にある大阪薬科大学５回生の辻大貴さん（24歳） ＝ 写真 ＝ は、今、とてつもない大きな夢に向かって頑張っている。再来年の薬剤師国家試験合格を目指して勉強をする一方で、月に２回は大阪府内のスーパー銭湯のステージに立って演歌を歌い、メジャー演歌歌手を目指しているのだ。作詞家で作曲家の中村泰二がプロデュースする大阪・道頓堀の新名所「道頓堀ＳＵＰＥＲ歌謡劇場」では裏方として活躍。そこで2015年５月21日に歌手デビューする。歌う曲目はあこがれの福田こうへいの「峠越え」。去年からは民謡も習い始めた。福田からは「頑張って！」と、＜直電＞をもらったと感激する。でも、どうして薬剤師と演歌歌手なの－。







　「薬剤師で演歌歌手って、ほかにいないでしょう」
　その理由は単純だった。
　薬剤師の資格を持つ歌手は、音楽グループケツメイシ（エイベックス）のメンバーの中にも２人いる。彼らは外資系の製薬会社の勤務歴もあるが、現在は歌手専業。ところが辻さんが、合格率50％という難関の薬剤師国家試験に合格し、演歌歌手としてメジャーデビューする日がやって来ると、初の薬剤師演歌歌手が登場することになる。

　「険しい道でしょうが両立させてやり通したい」
　辻さんの決意は固い。


　彼が歌を始めたのは高校時代だった。ビートルズやスティービーワンダーに憧れて軽音楽の活動をしながら、音楽専門学校への進学を目指していた。ところがノドを傷めて、大学進学に方向転換。
　そんな頃に黒人演歌歌手として話題になったジェロがデビューした。それまでポップスばかり聴いたり歌っていたが、ジェロの歌を聴いて演歌に興味を持つようになった。

　大学に入ると、大阪・心斎橋のクラブで歌のアルバイトを始めた。最初はポップスを歌っていたが、ある時、思い切ってジェロの「海雪」を歌ったところ、新鮮に聴こえたのだろうかリクエストの声がかかった。そんなこともあって、少しずつ演歌の面白さにはまっていった。


　今、辻さんは週１回、なんば高島屋前で路上ライブを続けている。演歌を路上で歌うのは珍しく、道行く人も立ち止まって耳を傾ける。
　場所を変えて梅田で歌うこともある。去年４月に大阪駅前で歌った時もたくさんの人垣が出来ていた。その中の１人から「来月オープンするスーパー銭湯で歌わないか」と声を掛けられた。それが今、毎月15日と月末の２回、氷川きよしや福田こうへいなどのカバー曲を歌っている大阪府門真市のスーパー銭湯・ゆの蔵のステージである。初舞台から１年になる。

　「自分の歌をたくさんの人に聴いてもらえるのがうれしい」

　テレビのコンテスト番組への挑戦も続けている。
　今年４月にはテレビ東京系のカラオケ採点番組「THEカラオケ☆バトル」に出演し「大井追っかけ音次郎」（氷川きよし）を歌った。出場者全員が95点以上というハイレベルの競争の中で彼は95.953点で予選で敗退。

　当初は「南部蝉しぐれ」（福田こうへい）を歌う予定にしていたが、急きょ曲目変更があった。「得意な『南部蝉しぐれ』ならば98点以上の自信はあったのですが」（辻さん）と、残念そうでもあった。

福田こうへいから激励の電話

　去年から民謡を習い始めている。在阪の民謡歌手、湊由加里さんが主宰するゆかり会に入会して４ヶ月目の去年５月、発表会で「四万十川舟歌」を歌って優勝してしまったのだ。
　「三橋美智也さんや福田こうへいさんの歌が好きだったなど、以前から民謡をやってみたいと思っていました。節回しや声の出し方、そして歌詞の世界観を学ぶのに勉強になればと思っています」

　優勝してしばらくした頃、ある日突然に彼の携帯電話に電話が入った。
　声の主はなんと、尊敬するあの福田こうへいであった。福田は民謡歌手としても日本一の座を射止めたほどの実力の持ち主である。
　「もしもし優勝したんだって。おめでとう」
　少し岩手訛りがあるあの声で話しかけてきた。びっくりするとともにうれしさがこみ上げてきた。

　「声の出し方やノドの作り方など、電話でいろいろと教えてもらいました」

　辻さんは今年も発表会に出場する。その「ゆかり会創立１３周年 日本民謡まつり」は、きょう５月17日、大阪市住吉区の住吉区民センターで開かれる。優勝者に贈られるキングレコード杯を再び辻さんは手にすることが出来るのだろうか。

　５月21日には大阪・道頓堀のライブハウスＺＡＺＡで開かれる道頓堀ＳＵＰＥＲ歌謡劇場に、その福田こうへいの「南部蝉しぐれ」でデビューする。
　「路上ライブ、スーパー銭湯のステージ、そして民謡すべてが、演歌歌手を目指す自分にとって良い教材になると信じています」と話す辻さんは、今、着々と薬剤師メジャー歌手への道を目指して突き進んでいる。


［辻 大貴　ブログ］
http://ameblo.jp/singer-moco/